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介護とお金シリーズ:相続編その2 介護をしてくれた娘のために遺言書を作成する

  • コレカさん (神奈川県在住)
  • ファイナンシャル・プランナー

〇遺言書を作成する人が増えています

山田さん(仮名)は83歳。要介護状態になってから、すでに5年が経過しています。現在は要介護3で、家族や介護保険での介護を受けていますが、体調は良く、記憶や意思表示にも問題はありません。お子さんは3人いるのですが、長男と次男は家を出ており、長女が同居し、身の回りの世話をしてくれています。
山田さんの財産は夫が残してくれたわずかばかりの金融資産と自宅だけです。自分が亡くなった際に、財産を三等分するとしたら、自宅を売り払わなくてはなりません。そうすると、長女は住み慣れた家から転居しなければならず、娘のためにも自宅を残してあげたいと思っています。長年、長女が介護をしてきてくれたし、そのあたりは長男、次男もわかってくれるとは思うのですが、それぞれ配偶者もおり、確実なことはわかりません。そこで、遺言書を作成しておくことにしました。

近年、遺言書を作成する人が増えています。日本公証人連合会によると、平成29年に遺言書を公正証書として作成した件数は約11万件となっており、10年前に比べて約49%もの増加となっています。この間の高齢者(65歳以上)の人口の増加率は28%ですので、高齢化の進展以上に「遺言書を作成する人の割合が増えている」といえます。

〇遺言書には3つのタイプがあります

遺言書は、あらかじめ自分の財産を、誰がどのように相続するかを、自分の意志で指定おく書類です。一般に「ゆいごんしょ」と言われていますが、法律用語では「いごんしょ」とされています。作成の方法によって、主に次の3つに分けられます。

自筆証書遺言:遺言書を残す人が、全文、日付、氏名を直筆で書き、捺印をして、保管しておきます。遺言書を書いた人が亡くなったら、遺族は封を開けずに、遺言書を家庭裁判所に持って行き、「検認」をしてもらいます。作成の費用や手間がほとんどかからないのがメリットですが、紛失や財産分けの後に発見されるなどの危険性があります。
公正証書遺言:公証役場に行き、公証人に作成してもらいます。公証人は、遺言書の作成依頼者が言った内容を遺言書にし、公証役場で預かってくれます。死後に家庭裁判所での検認は必要ありません。証人が2人必要ですが、家族などは証人になることができません。メリットは、公証人が作成しますので、無効となる心配がないことと、偽造、紛失の心配がないことです。デメリットとしては、作成費用と証人が必要なことです。
秘密証書遺言:自分で遺言書を作成し、公証役場に預ける方法です。遺言書は公証役場で預かってくれますが、死後に家庭裁判所での検認が必要です。メリットとしては、証人が必要ありませんので、内容が他人に漏れる心配がありません。一方デメリットとして、作成に公証人が関与していませんので、記載内容によっては無効となってしまう可能性があります。

〇遺言書のルールに気をつけよう

必ず日付を入れる、後から修正する場合は適切な手順を踏む、など遺言書の作成にはいくつかのルールがあります。有効な遺言書とするためには、公証役場で公正証書遺言を作成するのが確実です。費用は、その人の財産額によりますが、500万円超1,000万円以下で17,000円、3,000万円超5,000万円以下で29,000円と、それほど高くはありません。
遺言書による財産分けの指定は、法定相続割合にこだわる必要はありません。子供のうち、一人だけ多く相続するような指定もできます。ただし、配偶者や子供には「遺留分」があります。特定の子供には「財産を相続させない」と遺言書で指定されていても、法定相続割合の半分まではほかの遺族に対して、財産を請求できる権利です。このため、すべての相続人が、最低でも遺留分は確保できるようしておくと安心です。

ただ、遺言書には限界もあります。相続人、つまり遺族が全員で遺言書に従わないことに合意した場合は、遺族の合意で分割の割合を決めることができます。遺言書を作成しても、必ずその通りに相続されるとは限りません。それでも、遺言書を遺すことで、家族の間でのトラブルを防ぎ、自分の意思を反映した相続となる可能性が高まります。
遺言書は基本的には、財産の項目とそれを相続する人の名前を箇条書きで書いていきます。そこに理由や説明などは必要ありません。ただ、その後に「付記事項」というものを書き加えることができます。これは、遺族に向けたメッセージです。法的な拘束力はありませんが、自分の考えを伝えることができますので、相続財産の割合に差をつけた場合などに有効です。亡くなった親の思いを目にすることで、財産分けの指定を受け入れてくれるようになるでしょう。

山田さんは、公証役場で遺言書を作成することにしました。かろうじて長男、次男の遺留分を確保しながら、自宅を長女が相続するような遺言書ができそうです。
なお、政府は今年度の法律改正で、自筆証書遺言をワープロで作成できることや公証役場で預かってもらう制度を検討しています。これから遺言書の作成を考えている方は、今後の法改正の動きにも注視していきましょう。

次回は、遺言書と同じように相続する人を事前に指定するだけでなく、生前からも活用できる「信託」についてご紹介していきます。

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