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介護とお金シリーズ:相続編その3 相続にも、自分のためにも使える「信託」

  • コレカさん (神奈川県在住)
  • ファイナンシャル・プランナー

〇「信託」で相続する

佐藤さん(仮名)は80歳。まだまだお元気ですが、実は自分の死後のことが心配でなりません。佐藤さんは夫が残してくれた自宅と金融資産を保有しています。同居している長女が自宅を相続すると、金融資産の多くは別居している長男が相続することになりそうです。

ところがこの長男が心配です。仕事が長続きせず、就職しては辞めることの繰り返しです。
その上、金遣いが荒く、お金が入るとすぐにあるだけ使ってしまいます。小遣いをせびりに来ることもしばしばで、そのたびに佐藤さんはやむなく応じていました。
自分が亡くなって、長男がまとまった金融資産を相続してしまうと、仕事もせずにあっという間に使ってしまいそうです。長男が相続するのが嫌なわけではありません。ただ、せっかく夫が築いてくれた財産ですので、計画的に、大切に使ってほしいのです。長男が相続する分も長女が管理するように遺言書に書いておけばよいか、と私を訪ねてきました。

前回、遺言書についてご紹介しましたが、遺言書で指定できるのは、あくまで相続のところまでです。相続した後の、財産の使い方や管理方法までは指定できませんし、遺言書に書いたとしても効力はありません。そこで私は、「信託」を紹介しました。

〇「依頼者の指示」に従うのが「信託」の魅力

「信託」というと、投資信託を思い浮かべる人が多いかと思います。確かに投資信託も「信託」の1つですが、それだけではありません。そもそも「信託」とは「他人にお金を託す」という意味で、財産を持っている人が「利益を受けて欲しい人」のために、資産管理の専門家などに財産を託すことを指します。利益を受けて欲しい人は、自分の場合もあれば、子供や遺族の場合もあります。

資産管理の専門家は、「利益を受けて欲しい人」のために財産の管理をしますが、依頼者は財産を託した人です。よって、財産を託した人の依頼通りに管理します。「毎月、10万円ずつ長男に渡してほしい」との依頼であれば、依頼者の死後もそのとおりにしていきます。たとえ、長男であっても自由に財産を引き出すことはできません。さらには、長男が亡くなった後に、残りの財産を相続する人まで指定することもできます。つまり、自分の死後のお金の使い方を指定できるのが「信託」なのです。

資産管理の専門家である信託銀行では多くの信託商品を扱っています。例えば「遺言代用信託」では、預けた財産を、自分の死後に、定期的に相続人に渡していくことができます。一度にまとまった財産を受け取ると、散財してしまったり、資産運用で減らしてしまったりする可能性があります。その点、「毎月10万円ずつ受け取る」となっていると、受け取る方も計画的な使い方ができますし、運用で財産を減らしてしまう心配もありません。

〇自分で預けて、自分で受け取る

さらに、「自分で預けて、自分で受け取る」ということもできます。「利益を受けて欲しい人」を自分にするのです。高齢になると、大きな金額の財産の管理には不安が伴います。認知症になると、他人に騙し取られる危険性があります。その点、財産を信託に預けてしまうと、自分が受け取るのも、あらかじめ決めてある金額だけです。その方が安心できるという人もいるでしょう。

認知症になった際の資産の管理には、成年後見制度もあります。成年後見人に指定された人が、認知症になった人の代わりに財産を管理します。ここでも「信託」を併用することがあります。毎月一定の金額だけを成年後見人が引き出せるようにして、認知症の人のために使うようにするのです。「成年後見支援信託」と言います。財産を管理する後見人としても、この方が安心できるので、後見制度と一緒に利用されることがしばしばあります。

財産を「信託」とする場合には、信託銀行の信託商品を利用するのがもっとも簡単です。信託銀行の支店がない地域も多いのですが、地方銀行が窓口になっている場合があります。まずは扱いがあるかを確認して、予約をしてから行くとよいでしょう。金融機関でも日常的に扱っている商品ではありませんので、突然尋ねても答えられないことが多いのです。
信託する金額は、1,000万円以上からが多くなっていますが、商品によっては200万円程度から始められるものもあります。ただ、信託銀行で扱っているものは、商品として一定の形式になっていますので、自由に設計することはできません。

一方、信託銀行の代わりに、親族などを管理者として、家族でオリジナルの「信託」を作成することもできます。公正証書を作成する必要がありますので、司法書士や家族での信託を支援している団体などに相談するとよいでしょう。まだ制度がスタートして間もなく、さかんに利用されているというわけではありませんが、今後は、相続のために、そして自分自身のために、活用が広がっていくことでしょう。

佐藤さんは、相続後の長男のことだけでなく、自分自身のためにも「信託」を利用することにしました。まとまった金融資産を信託銀行に託し、毎月8万円ずつ普段の生活費の口座に振り込まれるようにしました。年金収入もありますので、これだけあれば十分です。そして、自分の死後は、そのまま長男が受け取るように指定をしました。長男には仕事をしてもらいたいという思いで、あえてこの金額にしました。これであれば、長女の手をわずらわせることはなさそうです。

 


 

3回にわたって、ファイナンシャル・プランナーのコレカさんに相続について様々なケースや対策を教えていただきました。

相続について考えたことはないというご家庭、ご家族も多いとかと思いますが、将来的に家族間で金銭トラブルが起きないようにするためにも、今から相続に関する知識を身につけておくことは大切ですね。

介護とお金シリーズの相続編は今回で最終回ですが、まだまだ介護とお金に関して知りたい!〇〇編をやってほしい!というご要望がありましたら、ぜひコメントでお聞かせください。

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