介護でつながる輪

介護と社会問題を考えようシリーズ① ちょっと待って、介護で離職

  • ハルコウさん (東京都在住)
  • 少子高齢社会ライター

現在は日本の人口の4人に1人が65歳以上の高齢者です。1985年には10人に1人だったことを考えると、急激なスピードで高齢化が進んでいることがわかります。これに伴い、家族の介護を担う人が増えていることはご存じのとおり。介護はもはや、個人や家族のプライベートで解決できるレベルではありません。大介護時代をどう乗り切るか。今回からは「介護と社会問題を考えようシリーズ」をお届けします。第1回は多くの人の頭に一度はよぎる「介護離職」です。

○離職による経済問題

「介護転職した人の平均年収は男性で4割、女性で5割ダウンしている」
明治安田生活福祉研究所とダイヤ財団の共同研究「仕事と介護の両立と介護離職調査」(2014年)で、ちょっと衝撃的な数字が公開されました。介護に伴う離転職は、大幅な収入ダウンをもたらしている実態が浮き彫りになったのです。
しかし、いまの日本社会で介護と仕事を両立させるのは、たやすいことではありません。介護経験者は「ヘルパーさんが帰る18時には帰ろうと思うと、17時には会社を出なくてはならない」と話します。
とはいえ定時で毎日さっさと帰ることのできる職場は決して多くありません。事情を周囲に話せばいいのですが、多くの職場でそのぶんの仕事のしわ寄せは周囲にいくでしょう。「迷惑をかけたくない」と、介護自体を隠す人も決して少なくないようです。
そうして仕事と介護の両立の限界に耐え続けた結果、「いっそのこと離職しよう」と考える人は後を絶ちません。厚生労働省調べで、年間の介護離職者は10万人を超えています。

○大介護時代の到来はこれから。

ただ、今の日本社会は、介護離職に手をこまねているわけにはいきません。日本の働き手は少子高齢化で減り続けています。国立社会保障・人口問題研究所の調査(「日本の将来人口推計」では、2013年時点で約8千万人だった15~64歳の人の数が2027年には1千万人減少するとの試算もあります。そんな中で現役世代が介護を理由に次々に離職してしまうと、企業は深刻なレベルで働き手を失ってしまいます。収入の減る人が増え、景気は悪化するでしょう。
そして、大介護時代が訪れるのはいよいよこれからです。「2025年問題」とも言われていますが、団塊の世代がすべて75歳以上の「後期高齢者」になるのが2025年。認知症患者の増加に少子化による介護の担い手の減少など課題も山積みです。それまでに、介護と仕事を無理なく両立させることが当たり前の社会をつくらなければなりません。

○企業や国は介護離職防止に

ところでみなさんは、介護休業制度についてご存じですか?
介護休業制度は、育児・介護休業法によって
・会社に雇用された期間が1年以上で
・休業後も引き続き雇用される見込みさえあれば
すべての人が取得できます。大企業であろうが中小零細企業であろうが同じです。会社に申し出ることで、取得が可能です。会社は申し出を拒否することはできません。
ただ、法定の介護休業は93日です。介護に専念する休業としては短く思えますが「これから続く介護体制を整える準備のための休業」と国の担当者は明言しています。

休業期間中の賃金は会社によりますが、無給や減給となるケースがほとんどです。収入減でも生活に困らないように、雇用保険から「介護給付金」が支給されます。
・条件としては休業開始前2年間に、賃金を支払われた日が11日以上の月が12カ月以上ある
・事業主(会社)がハローワークに支給申請書を提出によって受け取れます。

さらに今年2017年(平成29年)1月からは育児・介護休業法の改正により
・93日まで3回を上限に分割して取得できる
・介護が終わるまで3年間の残業を免除させる
・介護休業給付金が休業前の賃金の40%→67%に引き上げ
といった点でさらに使いやすくなりました。
厚生労働省:育児・介護休業法が改正されます。(平成29年1月1日施行)

こうした基本的な制度について、よく調べずに介護生活を悲観する人は意外に多いのです。

企業も、法定の制度以上の支援体制を整えるところが増えてきました。全社員を対象に年間100時間分の介護サービスを会社が負担したり、全社員を対象に在宅勤務を認めたりする企業も出てきています。国が近年、長時間労働見直しを打ち出したのも、大介護時代の到来を見据えてのことです。

今後、高齢化は加速しますが、それと共に社会の仕組みも変わろうとしています。介護と仕事の両立の日々に「もう無理だ」とくじけそうなとき、ちょっと待ってみてください。介護する人を支援する法や制度の情報に目を向け、これらを使いながら、なんとか介護と仕事を続ける方法を共に探っていきましょう。

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