介護でつながる輪

介護とお金シリーズ(4)認知症になった場合の財産の管理

  • コレカさん (神奈川県在住)
  • ファイナンシャル・プランナー

老後の資金計画をご相談に来られた高田さんは70代の女性です。

ご主人はすでに亡くなっており、介護が必要になったら有料老人ホームに入居しようと考えています。将来の資金状況をシミュレーションしたところ、今の預貯金では資金不足に陥りそうなため、いずれはご自宅を売却して、入居一時金や月々の入居費用に充当する必要があることがわかりました。

「認知症になったら、隣町に住む長女に自宅を売ってもらいます。」
高田さんは、何の疑問も持たずにおっしゃいました。

〇親族が勝手に不動産を売ってしまうことはできない

高田さんは、認知症になったら娘さんに自宅の売却をお願いしたい…とのことでしたが、家族といえども、本人以外の人が不動産を売却したり、預金を引き出したりすることはできません。たとえ本人が認知症となり、判断能力がなくなってしまった場合も同様です。

有料老人ホームの入居や、そのための自宅の売却など、高齢になってから大きな金額の契約が必要になる場合は少なくありません。そこで、代わりの人が法的な裏付けを得て、財産の管理をできる「成年後見制度」という制度が設けられています。

●成年後見制度
家庭裁判所に選ばれた人(成年後見人)が、すでに認知症など判断能力がない人(被後見人)に代わって財産に関する法律行為(財産の処分や契約など)を行うことができる仕組みです。

親族などが家庭裁判所に申立てをすると、成年後見人が選ばれます。
成年後見人には、親族あるいは、法律の専門家である弁護士や司法書士、行政書士などが選ばれることが多くなっています。()選ばれた成年後見人は、被後見人のために財産の管理や処分をします。そして、定期的に家庭裁判所に報告をします。
成年後見の申し立てには、後見人の希望を出すことができます。子供を含め親族が成年後見人になることも少なくありませんが、親族間などで対立がある場合などは選ばれません。

また、後見人になる人を〝予約〟しておく、「任意後見制度」という制度もあります。

●任意後見制度
あらかじめ判断能力があるうちに、認知症になった場合の後見人(任意後見人)を自ら選んでおき、公正証書で契約を結んでおくものです。判断能力が不十分になった時には、任意後見人を監督する人(任意後見監督人)が家庭裁判所で選ばれ、後見がスタートします。療養や看護に関する事務の代理権も対象とすることができます。

任意後見人は、判断能力があるうちに本人が契約しますので、任意後見人の報酬もその契約で決めます。一方、成年後見人や任意後見監督人の報酬は、被後見人の財産額などを考慮して家庭裁判所が決めます。

報酬の目安(東京家庭裁判所)

 成年後見人任意後見監督人
財産が1,000万円以下月額2万円月額1~2万円
財産が1,000万円超~5,000万円以下月額3~4万円
財産が5,000万円超月額5~6万円月額2万5千円~3万円
※成年後見人が親族(含む子供)の場合、その親族が希望しなければ、報酬を支払う必要はありません。

〇判断能力があるうちは…

成年後見人も任意後見人も、財産の管理をするのは、本人の判断能力が不十分になってからのことです。判断能力があるうちは使えません。しかし、認知症になっていないとはいっても、高齢になれば大きな金額の取引や契約などは不安でしょう。外出が困難になり、誰かに代わりにやってほしいということもあります。

●財産管理委任契約
そのつど委任状を作成し、住民票や印鑑証明などと合わせて提出することで、代理人を立てることもできます。しかし、そのたびに準備をするのは手間もかかりますし、緊急時が不安です。判断能力があるうちは、「財産管理委任契約」(「任意代理契約」ともいう。)を結んでおくとよいでしょう。金融機関に届け出ておけば、預貯金の引き出しや、株式や投資信託などの有価証券の売却を代理人ができます。

日常生活では、家族が代わってお金の管理をすることもありますが、大きな金額の財産の処分となると、そうはいきません。あらかじめ配偶者や子供などを代理人として契約しておけば、いざというときにあわてずにすみます。

〇一人暮らしの人に向いた制度

一人暮らしなどで、日常的な金銭管理が不安だという場合には、「日常生活自立支援制度」があります。地域の社会福祉協議会が、公共料金の支払いや福祉サービスの利用援助をしてくれます。また、契約書などの重要書類の預かりもしてくれます。いずれも1,000~3,000円程度と、それほどの負担ではありません。

任意後見人と「見守り契約」を結んでおくのもよいでしょう。定期的に様子を見に来てもらうことで、後見の開始を適切に判断してもらうことができます。
さらに、自分の死後に葬儀や財産の処理、住まいや入居施設などの契約終了などさまざまな事務を依頼しておくこともできます。「死後事務委任契約」と言われるものです。
任意後見契約、財産管理委任契約、見守り契約、死後事務委任契約は、セットで契約されることが多いようです。いずれも公正証書にしておくと信頼性が増して安心です。

ご相談に来られた高田さんは、将来に備えて任意後見契約を娘さんと結んでおくことにしました。認知症になり、判断能力が失われたら、家庭裁判所に申出て、任意後見監督人を付けてもらいます。その上で、長女に自宅を売却してもらい、有料老人ホームの費用を確保することにしました。今も娘さんはしばしば自宅によってくれていますし、将来の準備もできたので、できるだけ自宅で一人暮らしを続けていくそうです。

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